溶接強度の不足を防ぐには?現場でできる「数値による品質管理」と安定化のポイント

スポット溶接において、外観の美しさと同様に、あるいはそれ以上に重要なのが「溶接強度」です。 見た目はきれいに付いているように見えても、内部の溶け込みが不十分であれば、製品として求められる強度は確保できません。
しかし、溶接の内部は見えないため、現場では「本当にこの条件で大丈夫なのか?」「強度は足りているのか?」という不安がつきまとうものです。
本記事では、溶接強度が不足する主な原因と、「簡易引張試験機」を用いて現場で手軽に強度を測定・数値化する方法、そして強度のバラつきそのものを防ぐための設備について解説します。
1. 溶接強度とは?強度が不足する主な原因
スポット溶接の強度を決める最大の要因は、接合する金属板の間に形成される「ナゲット(溶融核)」です。ナゲットとは、金属が溶けて固まった部分のこと。このナゲットが適切な大きさで形成されていなければ、十分な結合力は得られず、外部からの力で簡単に剥がれてしまいます。
現場で「強度が不足している」「強度が安定しない」といった問題が起きる場合、主に以下の2つの原因が考えられます。
溶接の「3大要素」のバランス崩れ
ナゲットを適切に成長させるには、抵抗溶接の基本である以下の3つの要素が、板厚や材質に合わせて最適に設定されている必要があります。
- 溶接電流:流す電気の量
- 通電時間:電気を流す長さ
- 加圧力:電極で挟み込む力
これらが一つでも適正範囲から外れると、ナゲットが小さくなりすぎたり(強度不足)、逆にスパッタ(散り)が発生して母材を傷めたりします。
「勘と経験」による条件設定のバラつき
材質や板厚ごとに最適な条件は異なりますが、これを現場担当者の「勘」や「経験」に頼って決めているケースが少なくありません。
人によって設定条件が異なれば、出来上がるナゲットの大きさもバラバラになり、結果として製品の溶接強度にバラつきが生じてしまいます。
2. 現場ですぐに確認。「簡易引張試験機」による強度測定
溶接内部のナゲットの状態を正確に知るためには、実際に溶接したテストピース(試験片)を引っ張り、破壊するまで力をかける「引張試験」を行うのが最も確実です。しかし、大型の試験機は検査室にしかなく、現場ですぐに確認できないという課題がありました。そこで向洋技研が開発したのが、現場用簡易引張試験機「PT-30」です。

「数値」で見える化し、品質を証明する
PT-30の最大の特徴は、破壊された時の強度を「数値(kN:キロニュートン)」で確認できる点です。 メーター(アナログまたはデジタル)で客観的なデータが得られるため、「感覚」ではなく「事実」に基づいた品質管理が可能になります。これは顧客への品質証明としても有効です。
現場で使えるコンパクト設計
PT-30は軽量・コンパクトに設計されており、溶接ラインのすぐ横まで持ち運ぶことができます。 使い方も簡単で、テストピースをセットし、手動の油圧ハンドルを操作するだけです。特別な設備や電源を必要とせず、最大30kN(約3トン)までの引張試験を、現場の誰もが安全に行えます。
★製品情報:簡易引張試験機 PT-30 | 株式会社向洋技研
3. 安定した溶接強度を実現する「テーブルスポット溶接機」
「PT-30」を使えば強度の確認はできますが、量産現場において最も重要なのは、「そもそも強度不足の製品を作らない(不良を出さない)」ことです。 常に安定した溶接強度を実現するためには、溶接機自体の性能と機能がカギを握ります。向洋技研のテーブルスポット溶接機「MYSPOT」は、こうした現場の課題を解決するために設計されています。

「Easy Setting」で条件設定を最適化
MYSPOTには、誰でも最適な条件設定ができる「Easy Setting(イージーセッティング)」機能が搭載されています。 タッチパネルで「材質」「板厚」「金具の種類」などを選択するだけで、メーカーのデータベースに基づいた最適な溶接電流・時間・加圧力が自動的に設定されます。 これにより、作業者の熟練度や勘に依存することなく、常に安定したナゲットを形成することが可能です。
高剛性ボディによる確実な加圧
安定した強度を出すためには、設定通りの「加圧力」が常にワークにかかっている必要があります。 MYSPOTは、加圧時にアームがたわまないよう高剛性なボディ構造を採用しています。また、独自のガン構造により電極が逃げることなく確実に加圧するため、強度のバラつきを最小限に抑え、高品質な溶接を持続します。
★製品情報:MYSPOTとは | 株式会社向洋技研
まとめ
溶接強度は、製品の安全性と企業の信頼を支える土台です。 その品質を守るためには、まず「簡易引張試験機 PT-30」を用いて現状の強度を数値で把握すること。そして、「MYSPOT」のような条件管理を自動化できる設備を活用し、人によるバラつきを排除することが確実な近道です。
向洋技研は、「測る技術(試験機)」と「打つ技術(溶接機)」の両面から、お客様の現場における溶接品質の向上をサポートしています。